蝉が鳴く
5年付き合った彼女にフラれてから1週間
出会い系狂いと化している。
しかしいろんな人がいるもんだ
アニメ会社で働いてから営業に転職して人の輪を広げることに人生の真髄を感じている26歳
板前を目指して男だらけの環境で修行する、元彼がDV男だった22歳
元来自分は人に会うのがそんなに好きではない。小学生のころから人と遊ぶとその後の1人の時間が幸せでたまらなかった。
なんてことないスーパーのチラシを眺めて、虫と川の音しか聞こえない片田舎でぼんやり過ぎる1日が好きだった。
教育ママな母親とスポーツエリートの旨味を知り尽くした父親のもとではまるで人生には正解があってそれに近づくことこそ人生の真髄だと教えられた気がする。
だからこそ頑張ることの合間にサボることが幸せだ感じるひねた感覚を持つようになった。
大学の後輩には先輩小悪党ですよねと言われた。それってどうなのよ。そしてそんな自分を変える勇気も変わる気もしない。
破滅に進む勇気もなければガツガツのぼりつめようという野心もない。
残るものはきっとタバコの煙のようないつのまにか消えてしまうものだろう。
ゆとり世代だからなのか。
それとも厳しくも愛をうけて育った家庭のなかで培われた言いようのない自信、自尊心からか。
まだまだ自分のことはわかりそうにもない。
今年の夏はぼんやりするくらい暑い。
思い出すのは蝉の声、川の音、汗を手でぬぐいながら縁側でもう溶けきったパピコをすすっているいつかの少年だ。もうそろそろ捨てなよ。もう中身ないよ。それ。